風見鶏はどこを向く?

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女性記者とテレ朝の対応は間違っていたのか

 財務省福田淳事務次官はセクハラ問題を否定したものの、政治を混乱させたということで事実上更迭された。このセクハラ被害に遭ったのはテレビ朝日の記者であったということが、18日のテレビ朝日報道ステーション」・19日未明の会見で明らかになった。

 週刊新潮が発表した音源データや周囲の証言から福田事務次官についてはさすがにもう黒であることが判然としている以上、いま注目されているのは「テレビ朝日の対応は正しかったのか」ということである。

 18日朝刊の朝日新聞・読売新聞によれば、女性記者は自己防衛のために事務次官とのやりとりを録音しており、これについて報道するよう相談したが、上司が難色を示したため、週刊新潮編集部にデータを提供していたということがわかる。これについて、テレビ朝日の会見では、データ提供の件には「取材過程で得た情報を第三者に渡したことは報道機関として不適切で、遺憾である」とのコメントをしている。一方で、この件を報道しなかったのは「二次被害を恐れたため」だともいう。

 さて、テレ朝の対応に問題があるのは主に次の2点である。

  1. 報道をしていて、その被害者に対しての配慮が適切に出来ているかの定期点検をしているかわからない=二次被害にいままで鈍感だったのではないか、ということ
  2. 「取材過程で得た情報」とはいえ、女性記者の件は取材相手からの人権侵害にあたるもので、それに迅速な抗議が出来なかったのか、ということ(初動が遅い)

 特に2は問題である。この問題は記者でなくとも人として重大な人権侵害にあたるものであって、通常なら法廷闘争に持ち込むためにも録音をするのは普通である。それを元手にうまくやれなかったというのは、メディアとしてどうなんだろうかということだ。

 一方で、今回に関しては二次被害に敏感にならざるを得なかったのではないかというところも存在する。民進党の会見においてフリーランスの記者が女性記者の実名を晒したほか、「ハニートラップ論」を掲げるトンデモがいたり、もうカオスである。どうなってるんだ。そんなやつがいるから報道をためらう羽目になるんだぞ。意識が古すぎる。

 正直言って、全般的には「初動は遅いしだいたいこんな真夜中にやっておかしいと思わないのか」というマイナスイメージが強いが、しかし実際論、言わないと議論の起こらない話であった以上、この会見は開かれるべくして開かれた会見であり、会社の体質と向き合っていくという意思表明である。つまりこの表明に背くことがあったなら、大きな罰を背負うことになるわけで、そういうことを考えてまでも意思を表明するのはたやすいことではない。

 実際問題、週刊新潮が報じなければ麻生大臣はじめ多くの言論・政治関係者が事務次官の強気に押されて信じ込んでしまっていたからこそ、メディアの力にはいい意味で自覚的であることがいいと思っている。その意味で、テレビ朝日は一度、負けたのだ。

 思想言論に生きるよりも、現実に寄り添って強く生きる方がもっと難しい。茨の道を歩きだした。