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ここが変だよコンビニは ~店員が感じるいくつかのこと

 気が向いたら即筆を執れと誰かも言っていた気がするので、コンビニバイトと現在のコンビニ業界にまつわる僕が少しだけ知っていることについてちょっと書こうと思います。

 とある小さな、ともすればほとんどの方々がご存じないような、普通の住宅地に立地する何の変哲もないコンビニに、去年の春から働かせてもらってる身分の僕が知っていることはごくわずかですが、それでもいくつか「ここが変だよコンビニ」と思ってしまうことがあるのです。

「未成年”に”売っちゃいけない」けど「未成年”が”売ってもいい」タバコ

 未成年者喫煙禁止法によって、日本ではタバコは未成年への販売を禁止されています。ただ、未成年者飲酒禁止法によって同様に未成年への販売が禁止されている酒類と比べると、自転車でやってきてタバコを買いに来ようとするバカが未だに2~3ヶ月に1,2回のペースでやってきます。
 タバコを未成年に売ると店側に罰則が行くので、こちらとしても最大限打てる手を打ってタバコを売らないようにしなくてはいけません(まずこのシステムも問題ありすぎだろ、とは思いますが)。それは現状の制度なのでここでは論じないとして、不思議なことが、「タバコを未成年”に”売ったら罰則」なのに「タバコを未成年”が”売ってもノープロブレム」ということです。
 コンビニバイトは、(店にもよりますが)20歳未満の店員が一定数います。かくいう私も大学生ですし、さらに年下の高校生も数名います。だけど、平気でタバコを売ってます。
 ここで言いたいのは、未成年をめぐるタバコの売買に関しての不均衡云々ではなく、コンビニ本部にとって未成年は労働力として貴重であるが故に、未成年がタバコを売ることによって起こりうるデメリットを見て見ぬ振りをしているのではないかということです。
 大学生を含めたバイトをする未成年というのは、働きがいを求めるような一生の仕事とは違って、とりあえず目先の金が欲しいわけです。それが悪いことではないのは事実なのですが、いいように大人に利用されている面があるのもまた事実。未成年はコンビニにとって、流動的だが簡単にしかも安く使えて*1体力もある「労働力」です。
 では、「労働力」とした使われた未成年がタバコを売ることにどういう問題があるのか。ここで、「未成年がタバコを買ってはいけないが売ってもいい」という奇妙な仕掛けが影響を及ぼします。タバコが欲しい未成年(特に高校生・大学生)は大抵自分より年下の店員に未成年か否か判別されにくいんです。これが未成年の喫煙を助長しているのではないかとまでは思いませんが、間違いなく未成年がタバコを売っていることで生まれうるリスクではないでしょうか。

必ずどれか囮になる「中華まん」「揚げ物とフランク」「おでん」

 コンビニはせいぜいレジ前でしか商売できないので、現場としても自然とレジ前に力を集中しがち。そのため、自然とレジ前の「中華まん」「揚げ物とフランク」「おでん」はどうやったって過剰生産しがちです。各店舗で違いはあれど、夜遅くまでフライヤーを稼働させている店は見たことがないので、フライヤーが止まるとそこから深夜の時間帯にかけて売り切ることが目標になり、それでも売れなければ残った商品は深夜遅くに廃棄されます。
 では、この三種類で一番手間がかかるものはどれでしょうか? 中華まんはウチでは保温器に入れるだけなので、作る面で時間はほとんどかかりません(もっとも、売るのには結構時間を要するので、廃棄になりやすいものですが)。となると、時間がかかるのはやはりフライヤーを使って調理する揚げ物系でしょうか。確かに、揚げ物系は作るのに時間はかかりますが、うまく配分すれば*2売れる日はよく売れます。そうなると、実はもっとも時間がかかるのに最後まで残るのはおでんではないのか、と思うのです。
 おでんは各時間帯の人がまたがって調理をしています。朝が来るとともに深夜の人が仕込み、早朝の人が売り、昼の時間帯の人が出汁を変え、夕方の人が売り、次の深夜の人が売れ残った分を廃棄する・・・・・・。揚げ物系統より長く売られ、冬場のメイン商品としてその地位を確保しています・・・・・・が、おでんはこの時期、思ったよりも売れません。
 おでんが売れない理由としてよく言われるのが「秋頃にセールで安くしちゃうもんだから、冬の時期に売れないんじゃねーか」という話。ですが、消費の落ち込みを長引かせる要因としては、やや弱いかなという印象です。むしろ、おでんの売れ行きが不安定であるということに原因がありそう。
 おでんで一番売れる具材は、卵と大根、次いで厚揚げ(私調べ;異論は認める)。そういう具材から早くなくなっていきます。もちろん補充していくわけですが、そうこうしているうちに補充できる具材も少なくなっていくわけです。そうなると、残った具材だけでおでんを構成するのも結構難しくなる。しかも鍋いっぱいに具材が入っているわけではないので、お客さんの目を引かないし、仮に興味を持たれたとしても「あー、こんだけなんやな」と言われるだけだったり。こういう状況でおでんを売るのは難しいモノがあります。かといって、補充の具材をじゃんじゃん発注してくれ!と言えるわけもなし。だって、おでんそのものの売れ行きが不安定なんだもの
 結果的に、深夜の時間帯まで、「中華まん」「揚げ物とフランク」「おでん」のいずれか、特に「おでん」が売れ行きの足を引っ張り、廃棄の憂き目に遭う――ああ、なんと悲しき運命か。

結局、恵方巻きの大量生産は「売れるからやめるつもりはない」?

 皆さんは今年、恵方巻きを食べましたか。地鶏宅では食べました。別に伝統という感覚は皆無ですが、生まれたときにはもう習慣でした。まあ、でも家で食べられる数少ない寿司みたいなものだったので面白かったですけどね。
 さて、恵方巻きといえば、コンビニ業界のみならずスーパー業界などで大量生産・大量廃棄が問題になりましたね。「リサイクル工場に回される恵方巻きだったもの」を見ると、ロスされたものが貧困層に行き届けばいいけれども、恵方巻きみたいな鮮度が鍵を握るもんじゃ無理だし、システム自体に問題あるだろ・・・・・・と思った次第。
 特に特徴のない住宅街にある我らが店舗も、また恵方巻き商戦を繰り広げた日本全国に星の数ほどあるコンビニの中のひとつ。といっても、昨年とはその様子が異なるようで、昨年は一本モノの大型恵方巻きを店買い取りで売っていたのが、今年はペラペラのパンフレットでさりげなく予約販売に誘導する方向へ。
 しかしそれでも恵方巻きの大量生産はスケールダウンしながらも続いていたようで、前日から当日にかけて大量の店買い取りのカットされた恵方巻きが山のように並んでおりましたとさ。全部売れたからまだいいけど、これが親分のスーパーのように大量に並べて売ってあったとしたら・・・・・・背筋が凍る思いです。
 ウチはノルマも自爆営業もない割とホワイトな職場ですが、一部の店舗では未だにノルマが存在するんだそうです。そりゃ農林水産省も文書を出すわけだ。
 少し脇道に逸れますが、私の住む播州地域の地場スーパー・ヤマダストアーが恵方巻きについて、昨年から「前年実績で作る」取り組みを行っています。ヤマダストアーに関しては、知る人ぞ知る播磨灘が誇る春の珍味でありながら不漁の続いていたイカナゴも販売中止を決断するなど*3、実は持続可能な戦略を志向した方が業界全体にとっては得なんですが、この辺は所謂「囚人のジレンマ」というやつなんでしょうなあ・・・・・・。つまり、個別の店舗や企業の利益を優先して全体の利益がないがしろになってしまうという歯がゆさ。

 いろいろ書きましたが、まだまだ思うところがあるかもしれないのでまた思いついたら書きますと言っておいて〆。

*1:高校生は時給が異なるケースが存在する。また、そもそもコンビニ店員は全体的に深夜を除いて時給は安い傾向にある

*2:作りすぎれば売れないのは当たり前田のクラッカー。

*3:

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