風見鶏はどこを向く?

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ふぁぼされた分だけ好きなアルバムを紹介するやつ

 MBSラジオティルドーンミュージック」にfhánaが出ると聞いてタイムフリーの恩恵を受けつつ聞いていたんですけど、いいですね。この聴取者を鷲掴みにするのではなく、「来たい人だけ来て」というスタンス。「ハマればまさにカタルシス、お耳に合わなければ阿鼻叫喚」というキャッチフレーズ。アーティスト縛りも多いんですけど、結構ワンテーマでもやってくれるので、本当に気が向いた時に聞く感じですね。
 ちなみに(余談なんですけど)、MBSラジオのこの編成、ちょっと頭いいなと。ナイター中継が長引いたとき、クッション番組というものを置かないと番組が押した時に休止を余儀なくされるわけで。そんな中でこの番組を編成すると、番組がスライドしても二時間ほどなら無事。実質的なフィラー音楽(簡単に言うと埋め合わせ)としての役割を持ちつつ、視聴者参加の要素もある。実に賢いやり方です。
 余談終わり。
 さて、ツイッターで「ふぁぼされた分だけ好きなアルバムを紹介する」みたいなものをやったらそこそこあるので、9アルバムを厳選してお届けします。そもそも音楽はiPhoneに入れて聞く超のつくライトユーザーで、一応容量は64GBなんですがしょっちゅう整理整頓をしていて、アルバム全曲が残ることは少ないんですが、そんな中生き残ったものが今回のメインです。なお、fhánaは殿堂入りです。なので原則書きません。
 では早速。

 1.平原綾香「Winter Songbook」

 子供の頃から母親が平原綾香を聴いていたせいもあってか、すっかり歌声に魅了され、そこそこ聴いてるアーティストのひとりに。正直、オリジナルアルバムとカヴァー・アルバムで迷ったけど、技巧光るこのアルバムを選びました。
 古典的名曲「Auld Lang Syne ~ 蛍の光」、「Love Never Dies ~ 愛は死なず」をアルバムの最初と最後に配置し、その他にも「アルジャーノンに花束を ~Song of Baenadette」や「私のお気に入り ~My favorite things」などが大胆かつ繊細なアレンジと歌唱がなされています。ちなみに、ファンクの力強さをそのままに平原綾香の明るさを昇華させたという意味で、アルバム収録曲で唯一2000年台の「HAPPY」(ファレル・ウィリアムス)が一番のお気に入りです。

 2.米津玄師「YANKEE」

 何でか放送室にあって、そして掛ける曲がない時によく流していたのでいつのまにか覚えてしまったヤツです。昔は「パンダヒーロー」とか聴いてもビビッと来なかったけど、いまこうして米津玄師を知ってからそういった曲を聞くとまた違ったものを感じるので、人間の感性のアンテナの角度変化も不思議なものです。
 暗闇の中で疾走と奮起の熱情を感じる「リビングデッド・ユース」、東京メトロCMソングとしても起用された、切ない心のもどかしさの描写が秀逸「アイネクライネ」や「花に嵐」、カオスな「しとど晴天大迷惑」(僕はこのイメージを広義での「腐れ大学生感」と呼んでいる)、なんとも曖昧な時間を掴んで切り取ったような歌詞「眼福」。一見難解でメロディーに対しての言葉の密度が高いけれど、しっかり向き合うと「こんなにいいアルバムがあったのか……」となること必至。

 3.BURNOUT SYNDROMES「文學少女」

 BURNOUT SYNDROMESを知ったの自体が随分最近のことになるとはいえ、彼らの音楽性を全てぶつけてきた「檸檬」に衝撃を受け、ほぼ計画的衝動買い。そういえば、Vo.の熊谷さんって文学的な歌詞を書くのに理系っていう事実が伝わってきたときの衝撃といったら。ギャップ凄い。
 表題曲「文學少女」は、一サビ前とラスト前に文学作品のタイトルを勢い良く引用しながら強烈な印象を残しつつ、繊細だけど変化を伴って描かれる「文學少女」の姿が力強く描かれています。優しい炎がうちに宿っているとわかる、まさに瞬間、子を産んだ若き女性の少しの喜びと大きな決意を感じられる「こどものじかん」、死を選ぼうとしている学生の叙情的なことばが胸をつかむ「或るK大生の死」など、本当に陳腐な言葉で申し訳ないのだけど、名曲揃い。

 4.岡崎体育「BASIN TECHNO」

 色物とみられることも多いし実際歌詞でめっちゃ遊ぶけどええ人やし、サウンドは本気。あと歌詞も本気だすと心に沁みるもの、書きますね。
 中身はないけど曲は良い、それがこのアルバムの力であり、「岡崎体育への入り口」としての力をフルに発揮できる所以でもある。ただ曲の構成を説明するだけ「Explain」、ミュージックビデオあるある「MUSIC VIDEO」、歌ってる間に心の声が漏れ出す「Voice of Heart」。かと思えばハードな「スペツナズ」、憧れと今を自分に映し出す「エクレア」、とまた違った本領が発揮されたものも。

 5.高橋優「来し方行く末」

 光陰陽鬱併せ持った歌と声を作り上げるシンガーソングライター、高橋優。入門は「福笑い」からだったんですが、激しいエモーショナルな曲、高橋優の光と影をどちらも映し出す曲も戸惑いつつも受け入れていった感じです。
 このアルバムは陽にバロメータが振れている気がするんだけど、これはきっと大ヒットした「明日はきっといい日になる」に影響された所もあるんだろうか、と。たとえ影として対置されるような曲であっても、明るいほうへ歩く希望が感じられて好きです。「Cockroach」のように、その存在のネガティブさから想像できないほど踏み潰されても立ち上がる意地みたいなところを感じます。
 そんな力強さが日々に活力を与えてくれると信じて。

 6.山下達郎RIDE ON TIME

 俺が一番最初に行ったライブは山下達郎です。忘れもしない昨年1月の神戸。圧倒的なライブパフォーマンス、これが音楽に生きる人なんだ、と実感したステージでした。僕なんかファン見習いのまた見習いなんですが、間口は広くしかしどこまでも深き世界が彼の音楽には広がっているのかな、と。個人的にはこの前作である「MOONGLOW」が喉から手が出るほど欲しい。
 表題曲は言わずもがな山下達郎個人としてのビッグヒットを果たしていますが、これにはアルバムバージョンとして若干テンポの遅いものが収録されており、ボーナス・トラックとして収録されているシングルバージョンとの聴き比べも一興か。「いつか(SOMEDAY)」は聞くたびに、都市、街の生活を考える時、愛とは切り離せないものだと思う。この頃までに収録されている吉田美奈子の詞も達郎氏とは異なるエッセンスを感じる。

 7.Katy PerryTeenage Dream

 ここまでは実は結構理屈混じりで聴いて好きになったアルバムばかりだったが、このアルバムばかりはどうにも好きになった理由が分からない。いや、きっかけはある。「Fireworks」だ。華やかなサウンドとポジティブ性の固まりの歌詞、突き抜けるサビ。これに夢中になり、そしてアルバムを借りたけど、多様なバリエーションの曲に酔わされている最中というべきなんだろう。

 8.Q-MHzQ-MHz

 彼らの鮮烈な個性が滲み出た疾走感溢れるアルバム。「星の名は絶望」のギターの荒々しさに惚れるしか無かった。一曲一曲の主張が強いけど、特に「La Fiesta? Fiesta!」の不思議を覗く感覚はなかなか味わえない。各曲参加したアーティストの特性をフルに活かして、どういう音のバランスがいいかを徹底的に見つめたんだろうなあ。僕も「short hair EGOIST」の展開みたいに「ギターがここからバーンと入ってででっでっでっでで」と考えられる脳があったなら……

 9.秦基博「Evergreen」

 声、歌詞、メロディーの全てのバランスが優れている歌手といえば、で出てきた。ピアノを入れても弾き語りでも包み込まれるようでいて芯の通った歌は際立つ。中でも、オリジナルでは外的に盛り上がっていく自分にある闘志が、内側からふつふつ湧き上がるものになっていたアレンジに驚いた「Halation」と、一度は聞きたかった弾き語りでの「アイ」が特におすすめ。